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3F[イベントスペース&カフェ]
屋外テラスのある開放的な空間で、新しいライフスタイルや価値観、情報の発信を行います。 RAMO FRUTAS CAFEでは美・健康をテーマに、フルーツを中心としたメニューを、PANORAMA GALLERYでは多彩なイベントをお楽しみいただけます。
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    2017年4月6日(木)19時〜21時
    「未来の劇場」をテーマにしたトークショーの抄録です

    パノラマトーク01 「脳内に立体が浮かぶ」新しい劇場体験とは(後編)
    GINZA PLACEの「common ginza」(リンク)を舞台に、さまざまなつくる人たちを招いて「トークイベント+α」を発信していく「パノラマトーク」。記念すべき第1回は、「未来の劇場」をテーマに、海外でも高い評価を得ているボーカロイドオペラ『THE END』の制作者である渋谷慶一郎さん、YKBXさん、evalaさん、それにメディアアートキュレーターの阿部一直さんをお迎えしてのトーク&『THE END』の特別上映が行われました。

    日時:2017年4月6日(木)19時〜
    場所:GINZA PLACE内「common ginza」(リンク)

    渋谷慶一郎(音楽家)
    YKBX(映像作家ディレクター・アートディレクター・アーティスト)
    evala(サウンドアーティスト)
    阿部一直(メディアアートキュレーター)
    モデレーター:小川滋(株式会社電通)

    企画プロデュース:金原亜紀
    編集協力:松永光弘写真撮影:船本諒

    ■死は非常にパーソナルなもの

    小川:もう一つ、渋谷さんやevalaさん、YKBXさんたちと一緒に海外公演をまわらせてもらうようになって感じたのは、海外のほうがお客さんの層が広いということ。ふつうにクラシックオペラを見るような人もいれば、アート系の人もいる。現代音楽が好きな人もいる。『THE END』の海外公演には、そういういろんな嗜好性を持ったお客さんが一つの空間で、根本的に新しい体験を楽しんでいるという印象があります。すごく積極的に受け入れられているし、作品自体に興味も持たれている。メディアの食いつき方もすごいですよね。

    渋谷:たぶん、評判が先に伝わっているのだとは思いますが、でも、回を追うごとに反応が深くなっている感じはありますね。いちばん最初にシャトレ座でやったときは、記者会見なんかでも、「なんで初音ミクでやるんですか?」などと聞かれたし、ぼくもそのときはキレキレだったので(笑)、「その質問は日本でも100回くらい聞かれて飽きている。せっかくパリに来たんだから、もっといいことを聞いてくれ」などと切り返したりもしたけれど、そういうありふれた質問は確に減ってきている気がします。最近は日本の死生観とか、この作品とヨーロッパの死生観の関係性とか、そういうものが増えていますね。日本だとテクノロジーに関する質問も多いのだけど、逆にそういうものは海外ではほとんどない。どちらかといえば、哲学的な問いです。

    YKBX:ぼくもそれは同感です。とにかく、なんとか理解したいという質問が多い気がします。ぼくの場合はビジュアルについてですが、冒頭から最後まで「このシーンには、どういう意図があるんだ?」と細かく聞かれることも少なくない。あとは、やっぱり渋谷さんと同じで、死生観についてですね。

    evala:ぼくは、初音ミクと他のボーカロイドは何が違うんだ、というようなことを聞かれたりもします。日本ではそういう質問はほとんどありませんが……。でも、それもテクニカルというよりは、確かに思想的な話かもしれない。

    小川:『THE END』が発表された直後の2012年から2013年にかけてのころは、日本では初音ミクという一見、死とは関係のなさそうな存在が死を問うことについて、おそらく、東日本大震災によって生じた喪失感から解釈されることが多かったと思うのですが、そのあたりはどうですか?

    渋谷:そのころぼくがよく言っていたのは、死というものは、パーソナルなものなんだということです。人間って、知っている人や家族が死ぬとすごく重く受け止めますよね。でも、知らない人が1000人死んだり、1万人死んだりしても、悲しいかもしれないけれど、知っている人間の死の受け止め方とはまったく違う。死というものは、そのくらい個人的なものなんだと思うんです。
     だから、ぼくは『THE END』を、たくさんの人の死に直面して、そこにある喪失感がどうだというような作品にはしたくなかった。同時に、死というものが不可避的で、原因もなく、理由もなく、時期もまったく定めずにやってくることを考えると、人間はたくさんの死と共存しているともいえるんじゃないかとも感じていました。極端なことをいうと、PCのハードディスクが飛んじゃったという“死”が、まったく知らない人の死より、その人にとっては重大だったりするわけです。こういうと変な意見に聞こえるかもしれないけれど、実際のところはそうだと思うんですよ、人間って。

    阿部:ヨーロッパも、IS(イスラム国)をはじめとしたテロだったりというものにも直面していて、現在は解決困難なものが各国にまん延しています。そういうなかで、散在する小さな死というものが、よりリアルになってきてしまったという側面もあるかもしれません。『THE END』が必要とされていて、かつ、いまなお共感を得られているのには、そういう背景がある気もしますね。

    ■『THE END』は“劇場破り”

    阿部:初演時の2012年から2013年にかけてはどんどん手を加えて、特に最後の部分を、初演時に比べると長く延ばしたりしていますよね。YCAMのときは、文字どおり劇的なエンディングを迎えるかたちでしたが、東京公演のバージョンからはその先が追加されていて、なかなか初音ミクが死なない。
     例えば『蝶々夫人』のように、最後に劇的な死があると、ストーリーとしてはきれいに落ちるんです。だけど、『THE END』は、渋谷さんがどんどん引き延ばしていて、いつまでもミクが死なない。というか、死んでいるのか、死んでいないのか、分からないような宙ぶらりんの状態がつづきますよね。

    渋谷:2012年にYCAMでやったときは、いちばん最後はホワイトノイズの嵐で、ごう音のなかで舞台がひっくり返って終わるというような、エクストリーム志向でした。それは当時のメディアアート周辺、テクノロジー周辺にはすごくフィットしていたと思うんです。でも、同時にそのままだと作品が残らないとも思っていました。
     というのも、実際の死というものは、もっとダラダラしていますよね。取り残された人たちの気持ちの持って行き場もダラダラしているし、死んでいると思いたくないとか、死とも生ともいえない、いろんな中間形態のようなものがあるのが実際の死です。
     そう思ったから、ごう音の後で、その直前の何十秒間かの曲を逆再生させた音楽をつくって、そこにボサノバのようなリズムが入ってきたりして、終わったのになんでまだ始まっちゃってるの?みたいな状態にしたんです。曲をつくりながら、同時に詞も書いたのだけど、そういうなかでぼくが考えたのは、誰かが死んだらできないことはなんなのかということだった。
     触れないとか、聞こえないとか、結構ないないづくしなんですよ。でも、これができない、あれができないといっているのも、死んでいるほうなのか、取り残されているほうなのかもはっきりしない。だから、そういうもの、つまりは死に対して人間ができないことを箇条書き的に並べて、それをリピートして終わるというかたちにしたんです。

    阿部:実をいうと、ぼくも最初は劇的な落ちがいいかなと思ったりもしたのですが、いま考えると、生きているのか、死んでいるのか、分からない状態で引き延ばされていくのも、すごく効いているなと感じています。
     これがいちばん印象的だったのは、オランダのアムステルダムなんですよ。ホランド・フェスティバルという大きなフェスティバルでの公演で、『THE END』の前後の演目が、ふつうのオペラだったんです。特に前の演目は、アルバン・ベルクの『ルル』だったんですよね。主人公のルルが切り裂きジャックに殺されるという、まさにヨーロッパ的な落ちで、それと『THE END』のミクはあまりに対照的でした。

    小川:阿部さんはメディアアートキュレーターとして、世界中のいろんなメディアアートをご覧になっているわけですが、『THE END』のような作品は、ヨーロッパでは出てこないのですか?

    阿部:ヨーロッパのオペラハウスでも、現代アートに区分される作品はたくさんつくられているんですよ。旧来的なオーケストラと合唱のような19世紀的なシステムを使って、現代のストーリーが上演されたりもしています。
     でも、そういうなかで『THE END』がこれだけヨーロッパの各地から呼ばれつづけているのは、ヨーロッパではプロデュースできないところがあるからだと思いますね。道場破りというか、劇場破りというか、きっとそういう存在なんです。裏を返せば、それは進化として認められているということだし、期待されているということだとも思います。

    渋谷:まったくかけ離れているわけではないとは思うけれど、絶対にヨーロッパからは出てこない発想ですからね。

    ■いまの東京は文化の発信が難しくなっている

    阿部:未来を考えるという点では、本当はこういう作品からエッセンスを抽出して、この先のクリエーションにどうつなげていくかが大切なんです。
     というのも、一般には劇場というと、チケットがあって、その番号通りにお客さんが前を向いて座って、ステージがあって、そこで作品が上演されるのを見て……というパターンが決まってしまっています。でも、『THE END』は、基本的な形式こそそれに沿ってはいるけれど、内容としては新しい視覚体験をひたすら追求している。そういう作品から、自由な表現をどうやってつくっていくか、それができる施設やシステムとはどういうものなのかといったことを、ぼくらは模索しなくてはいけない。

    渋谷:YCAMはともかく、そうやってアーティストが表現を追求できる場所が東京に一つもないのはおかしいと、ぼくは思いますね。「ハコモノ」という言葉がありますが、よくある一般的な劇場があちこちにできても、文化の発信にはならない。すでにできたものを見せるだけで、そこで新しいものをつくりだしているわけではないのだから。そういう意味で、東京は文化の発信が難しい場所になってきていると思う。

    阿部:クリエーターの質としては、東京は間違いなく世界最高レベルなのですが、真面目すぎるんでしょうかね。一種の狂気のようなものをそこに込められれば、すごいことになるとは思うのだけど……。

    渋谷:既存の公演をやるのは、いまある劇場でいいと思うんですよ。この先、大切なのは、アーティストとか、技術者が共同して何かをつくっているときの熱のようなものを、可視化することだとぼくは思う。それができると、東京はもっと変わるんじゃないですかね。
     ぼく自身はYCAMやヨーロッパで仕事をするようになって、劇場に対する信頼度がグッと上がったんです。『THE END』にしても、海外の劇場に呼ばれて行ってみると、現地の人がみんな本気で作品のために動こうとしてくれているし、ワクワクしながら見守ってくれたりもする。劇場でやるってことは机上の空論じゃなくて、リアルにこの場所で、この予算で、この集客で何をやるか、ということ。でも、いまの東京には、そういう場所がないんですよ。
     ホワイトキューブのラボを貸し出して、部屋のなかでアーティストが何かをつくっているのが外から見える。その場でリアルに生み出されている何かを見ることができる。最初はそれで十分だと思うんです。でも、そういうことをやらないで、借りてきたものを見せたりするだけの都市になると、なかなか成熟していかないんじゃないかと思います。

    小川:テクノロジーがアートをドライブする面と、アートがテクノロジーをドライブする面があると思うんです。このうちの後者が、特に日本では希薄だなとぼくは感じています。びっくりするようなこととか、笑っちゃうようなこととか、いろんなことが起きてくるような、真面目なことだけでできてない街になっていくように、フォーマットにとらわれず、いろいろ仕掛けていかなくちゃですね。

    (了)

    【登壇者プロフィール】
    ※前半後半共に共通

    渋谷慶一郎(音楽家)
    1973年生まれ。東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。2002年に音楽レーベルATAKを設立、国内外の先鋭的な電子音楽作品をリリースする。代表作にピアノ・ソロ・アルバム『ATAK015 for maria』『ATAK020 THE END』、パリ・シャトレ座でのソロ・コンサートを収録した『ATAK022 Live in Paris』など。また、映画『はじまりの記憶 杉本博司』、テレビドラマ『SPEC』など、数多くの映画やテレビドラマ、CMの音楽も担当。2012年には、初音ミク主演による映像とコンピュータ音響による人間不在のボーカロイドオペラ『THE END』をYCAMで発表。同作品は、その後、東京、パリ、アムステルダム、ハンブルク、オーフス、アブダビなどで公演が行われ、現在も世界中から上演要請を受けている。

    YKBX(ディレクター・アートディレクター・アーティスト)
    各種映像作品のディレクションや制作に加え、アートディレクション、イラストレーションやグラフィックデザインなど活動は多岐にわたる。トータルアートディレクションを目指した作品を数々リリースし、国内外の映画祭やイベントでも高く評価されている。初音ミク主演のボーカロイドオペラ『THE END』では、ルイ・ヴィトンと衣装コラボレーションを行い、全てのビジュアルディレクション・共同演出・映像ディレクターを務めた。
    2016年に安室奈美恵 “NHKリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック放送テーマソング” 『Hero』ミュージックビデオを手掛け、加えてアーティスト写真やジャケットなどの全てのビジュアルをディレクション。また、SMAPとのフェイスマッピングプロジェクトや安室奈美恵×GUCCI×VOGUEプロジェクト、攻殻機動隊ARISEのオープニング、現国立競技場クローズイベント映像演出や世界初OculusRiftを駆使したVRミュージックビデオをリリース、2014年にはソチオリンピック公式放送オープニングの演出などジャンルを超えた作品を数々生み出している。

    evala(サウンドアーティスト)
    先鋭的な電子音楽作品を発表し、国内外でインスタレーションやコンサートを行っている。立体音響インスタレーション『大きな耳をもったキツネ』や『hearing things #Metronome』では、暗闇のなかで音が生き物のように振る舞う現象を構築し、「耳で視る」という新たな聴覚体験を創出。サウンドアートの歴史を更新する重要作として、各界から高い評価を得ている。舞台や映画、公共空間においても、先端テクノロジーを用いた多彩な楽曲を提供したり、サウンドプロデュースを手掛けたりもしている。カンヌライオンズ国際クリエーティビティ・フェスティバルや文化庁メディア芸術祭での受賞歴多数。

    阿部一直 (メディアアートキュレーター)
    90年代のメディアアートをリードした「キヤノン・アートラボ」にて、数多くのアートプロジェクトをプロデュースしたのち、コンセプトや制度設計から関わった山口情報芸術センター(YCAM)でチーフキュレーター、アーティスティックディレクターとして主催事業全般をディレクション、監修。渋谷慶一郎らによるボーカロイドオペラ『THE END』のプロデュースも手掛けた。アートセンターのあるべき姿を意識しながら、人材育成や場づくりにも積極的に取り組んでいる。

    小川滋(株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター レガシー事業推進室)
    ゼロ年代から都市開発に関わるなかで、都市のブランディングと文化発信の関係に興味を深める。当初は一人の観客として『THE END』を見ていたが、縁あって2015年のオランダ公演から“中の人”に。 各国の招聘公演での観客やメディアの反応から、『THE END』のテクノロジーアートとしての魅力に確信を得つつ、いまに至る。

    2017年4月6日(木)19時〜21時
    「未来の劇場」をテーマにしたトークショーの抄録です

    パノラマトーク01 「脳内に立体が浮かぶ」新しい劇場体験とは(前編)
    さまざまなつくる人たちを招いて「トークイベント+α」を発信していく「パノラマトーク」。記念すべき第1回は、「未来の劇場」をテーマに、海外でも高い評価を得ているボーカロイドオペラ『THE END』の制作者である渋谷慶一郎さん、YKBXさん、evalaさん、それにメディアアートキュレーターの阿部一直さんをお迎えしてのトーク&『THE END』の特別上映が行われました。

    渋谷慶一郎(音楽家)
    YKBX(ディレクター・アートディレクター・アーティスト)
    evala(サウンドアーティスト)
    阿部一直(メディアアートキュレーター)
    モデレーター:小川滋(株式会社電通)

    企画プロデュース:金原亜紀
    編集協力:松永光弘
    写真撮影:船本諒

    ■音が身体を突き抜けていく体験

    小川:きょうは銀座でボーカロイドオペラ『THE END』の話ができるというので、ぼく自身、ちょっと興奮しています(笑)。『THE END』は、ご存じのとおり、音楽家の渋谷慶一郎さんが中心となって、サウンドアーティストのevalaさんやアーティストのYKBXさんらとコラボしてつくったメディアアート作品で、主演はボーカロイドの初音ミク。オーケストラはもちろん歌手も含めて、人間が出てこない世界初のオペラです。初演は、阿部さんがいらしたYCAM(山口情報芸術センター)でしたね。

    阿部:そうです。YCAMは劇場的なものも含めてさまざまなメディアアート作品をプロデュースしていますが、『THE END』は、その一つとして、2012年にぼくがプロデュースしました。

    小川:実はぼくもそのときのオーディエンスの一人だったので、初演のすごさも知っているのですが、さらにすごいなと思うのはその後です。翌年には、東京のBunkamuraとパリのシャトレ座で公演していますよね。その後もオファーが絶えなくて、初演から5年近くになるいまでも、世界のあちこちを巡回しています。

    渋谷:去年はアブダビでもやりましたね、UAEの。その前はデンマークのオーフスとドイツのハンブルク、それにオランダのアムステルダムです。

    阿部:ともするとすぐに過去のものになりがちなメディアアート作品が、5年たっても古くなるどころか、いまだに現在進行形なんですよね。リアルタイムの表現として、これだけ継続して世界中で受け入れられているのは、すごく珍しいことですよ。

    小川:始まりは、阿部さんから渋谷さんへのオファーでしたよね?

    渋谷:そうです。『THE END』に関しては、2012年に阿部さんから「何か新しい作品をつくりませんか」と声を掛けていただいたのが始まりでした。YCAMでは、その前にもサウンドインスタレーションをいくつかやってはいますが。

    阿部:最初は『filmachine』でしたね。あれもヨーロッパで評価が高かった。

    渋谷:ぼく自身も、画期的な仕事だったと思っています。いまでこそサラウンドやマルチチャンネルがはやりみたいになっていて、いろんなアーティストが使っているけれど、当時はまだ誰もやっていませんでしたから。あのころ、ぼくは複雑系の理論でつくったノイズを再生したいと思っていたのだけど、ふつうのスピーカーだと情報量が多すぎて、単なるノイズにしか聞こえなかったんです。でも、データ自体にはある種の規則性や周期性があるわけで、そういうものを伝えるのにどういう方法があるのかなと考えたときに、たどり着いたのがサラウンドだった。それをevalaくんと一緒にやったのが『filmachine』でした。

    阿部:少し補足すると、サラウンドというのは、立体音響のことです。アートの夢は、映像にしても、音にしても、立体なんですよ。それを音でトライしたという点で、『filmachine』は世界的なはしりだったんです。

    渋谷:例えば、新幹線が目の前を通り過ぎていくときには、すごい体感があるじゃないですか。その体験自体をぼくらは音でつくるんです。それどころか、新幹線だとできない、音が身体を突き抜けていくような超自然的な体験をつくったりもできます。

    evala:サラウンドというのは、いかに臨場感があるかということですからね。そういう意味では、新しい自然現象を人工的につくっているのに近いかもしれません。


    ■シャトレ座の空間を音が飛び回る

    渋谷:そういったことを『filmachine』でやりながら、自分たちのサウンドインスタレーションは、体験自体をデザインするという意味では現代のオペラだな、と思ったんです。ぼくのなかでは、そのあたりからオペラが引っかかっていましたね。もちろんワグナーがやっていたようなものではなく、まったく新しい体験としてのオペラですが……。実際に、そういうものをやりたいとは当時もevalaくんと話していて、いろんなことをやり始めてもいた。阿部さんからオファーをもらったのは、ちょうどそんなときだったんです。
     だから、何をやりたいのかと聞かれて、すぐにオペラと答えたのだけど、その時点でのアイデアは、自分のなかにあるオペラのイメージとevalaくんのサラウンドを組み合わせることでした。でも、そうこうするうちに、偶然、横部くん(YKBX)と知り合って……。彼はすごい、と率直に思いましたね。ぼくはアニメ好きでもないし、オタクでもないのだけど、作品の情報密度が自分と合うというか。すぐに一緒にやろうという話になって、そこからアニメーションの比重がどんどん増えていったんです。

    小川:初音ミクを使うことは、どうやって決まったのですか?

    渋谷:『THE END』のベースには、妻を亡くしたというぼく自身の個人的なテーマがあって、ストーリーのなかにも亡霊の声が歌うという設定が出てきます。それを誰が歌うのかと考えたときに、初音ミクがいいんじゃないかという話になった。そこからさらに話が進んで、出てくるのは初音ミクだけにしたほうが面白いんじゃないか、ということで落ち着きました。

    阿部:オペラは1600年ごろにヨーロッパでできたのですが、宗教的なものは別として、当時は人間の声で何かを表現する初めての試みでした。だから、人間が出てこないオペラというのは、それだけでもすごいことなんです。
     さらに、『THE END』は音響も映像も衝撃的です。例えば、先ほどアートの夢は立体だと話しましたが、ホログラムを使えば、立体映像はつくれます。ただ、いまの技術だと小さなものしかできない。せいぜい人間の等身大くらいのものです。そういう制約を超えて、2000人規模のホールでなんとか立体映像を見せようと、さまざまな工夫をしてもいますよね。

    YKBX:難解な脚本のなかで、ビジュアルでどこまで説得力を出せるかという部分では、かなり試行錯誤を重ねましたね。複数のスクリーンを使って、プロジェクションマッピングをしたりしながら、2次元の見え方ではなくて、複雑な見え方になるように設計して……。劇場によってステージの形も客席からの見え方も変わりますから、それに応じてセッティングを細かく調整したりもしています。

    阿部:加えて、もちろん音の面でも、人間の脳のなかに立体が浮かぶような挑戦をしています。YCAMでやったときも、相当な数のスピーカーを使いましたよね。

    evala:YCAMに限らず、劇場そのものを音響体にするイメージでつくり込んでいるので型通りにはスピーカーの数も決まらず、いつもびっくりするほど多くなりがちです。全てのウーファーを客席の下に仕込んだりもしました。

    小川:そうやってつくられたものを実際に体験してみると、まず序曲でやられます(笑)。弦の音がすごくナチュラルに聞こえてくるんだけど、それが絶対に現実ではあり得ないような空間の飛び回り方をしますから。

    evala:オーディエンスがびっくりしているのは、後ろから見ていても分かりますね。例えばシャトレ座は4階建てですが、その空間を音が上下に動き回るなんて、誰も体験したことがないわけですし。
     でも、オペラハウスや劇場って、そもそもステージの音がホール内にきれいに行きわたるような設計がなされているので、立体音響をやるには、本当はすごく不適切な場所なんです。だから、音の調整はかなり徹底してやらなくてはいけないのですが……。


    ■「耳で視る」体験づくり

    小川:最近はテクノロジーを駆使すれば、極端なことをいえば、家にいてもコンサート会場にいても同じ体験ができると思われがちだけど、本当はそうじゃないということですね。やっぱり、その場に行かないと体験できないことがある。

    渋谷:特に音はそういうものなんでしょうね。あとは必然性、かな。ときどき映像作品を大きく映しているだけの美術展があるのですが、ほとんどはあま面白くないんです。大きく見せても構わないのだけど、それ自体にどのくらいの意味や必然性があるのか。そこがきちんと成立している作品って、意外と少ないと思うんですよ。音も同じで、劇場や美術館でやるのなら、そこでしかできないことをやらないと意味がない。

    小川:2015年のオランダのアムステルダム以降、ぼくは海外公演のプロデューサーとして一緒にツアーをまわらせてもらっているわけですが、そばでevalaさんのお仕事を見ていると、すごくデジタルな部分の仕事と、現場で体験をつくっていくような手作業に近いような仕事との両方がありますよね。F1なんかでも、それぞれのサーキットに合わせて、マシンについてのベストなセッティングをつくっていきますが、さっきも少しおっしゃっていたけれど、あれに近いつくり込みを、その都度やるじゃないですか。

    evala:サラウンドの音響のチューニングは、オリジナルとしてあるものをただ生々しくリアルに再現するのとは違いますからね。ぼくらがつくっている体験は、いわば“空間のいたずら”で、ダイレクトに感覚に訴えかけてきます。それをぼくは「耳で視る」と言ったりしているのですが、つくるときにもやっぱり「耳で視る」んです。目に見えないものにフォーカスしながら、手間をかけて、その都度つくり込んでいくしかない。

    小川:そうやって、そこでしか体験できないものをつくっていくからこそ、あの作品には今日性があるのでしょうね。

    阿部:それはそうかもしれません。メディアアートの世界でいうと、60年代の後半くらいに、ジェームズ・タレルなんかも非常にパーソナルな体験づくりに取り組んではいたんです。でも、精度がずっと粗かった。それを最高に緻密な精度でやっているのがevalaさんです。そういう意味では王道なのだけど、結局、メディアアートの面白さというのは個人の体験にどうアクセスするかということなんですよ。『THE END』は、そこを非常に納得性の高いレベルで実現できているからこそ、いまなお古くなることなく、注目されつづけているのだと思いますね。

    (続く)

    【登壇者プロフィール】
    渋谷慶一郎(音楽家)
    1973年生まれ。東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。2002年に音楽レーベルATAKを設立、国内外の先鋭的な電子音楽作品をリリースする。代表作にピアノ・ソロ・アルバム『ATAK015 for maria』『ATAK020 THE END』、パリ・シャトレ座でのソロ・コンサートを収録した『ATAK022 Live in Paris』など。また、映画『はじまりの記憶 杉本博司』、テレビドラマ『SPEC』など、数多くの映画やテレビドラマ、CMの音楽も担当。2012年には、初音ミク主演による映像とコンピュータ音響による人間不在のボーカロイドオペラ『THE END』をYCAMで発表。同作品は、その後、東京、パリ、アムステルダム、ハンブルク、オーフス、アブダビなどで公演が行われ、現在も世界中から上演要請を受けている。

    YKBX(ディレクター・アートディレクター・アーティスト)
    各種映像作品のディレクションや制作に加え、アートディレクション、イラストレーションやグラフィックデザインなど活動は多岐にわたる。トータルアートディレクションを目指した作品を数々リリースし、国内外の映画祭やイベントでも高く評価されている。初音ミク主演のボーカロイドオペラ『THE END』では、ルイ・ヴィトンと衣装コラボレーションを行い、全てのビジュアルディレクション・共同演出・映像ディレクターを務めた。
    2016年に安室奈美恵 “NHKリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック放送テーマソング” 『Hero』ミュージックビデオを手掛け、加えてアーティスト写真やジャケットなどの全てのビジュアルをディレクション。また、SMAPとのフェイスマッピングプロジェクトや安室奈美恵×GUCCI×VOGUEプロジェクト、攻殻機動隊ARISEのオープニング、現国立競技場クローズイベント映像演出や世界初OculusRiftを駆使したVRミュージックビデオをリリース、2014年にはソチオリンピック公式放送オープニングの演出などジャンルを超えた作品を数々生み出している。

    evala(サウンドアーティスト)
    先鋭的な電子音楽作品を発表し、国内外でインスタレーションやコンサートを行っている。立体音響インスタレーション『大きな耳をもったキツネ』や『hearing things #Metronome』では、暗闇のなかで音が生き物のように振る舞う現象を構築し、「耳で視る」という新たな聴覚体験を創出。サウンドアートの歴史を更新する重要作として、各界から高い評価を得ている。舞台や映画、公共空間においても、先端テクノロジーを用いた多彩な楽曲を提供したり、サウンドプロデュースを手掛けたりもしている。カンヌライオンズ国際クリエーティビティ・フェスティバルや文化庁メディア芸術祭での受賞歴多数。

    阿部一直 (メディアアートキュレーター)
    90年代のメディアアートをリードした「キヤノン・アートラボ」にて、数多くのアートプロジェクトをプロデュースしたのち、コンセプトや制度設計から関わった山口情報芸術センター(YCAM)でチーフキュレーター、アーティスティックディレクターとして主催事業全般をディレクション、監修。渋谷慶一郎らによるボーカロイドオペラ『THE END』のプロデュースも手掛けた。アートセンターのあるべき姿を意識しながら、人材育成や場づくりにも積極的に取り組んでいる。

    小川滋(株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター レガシー事業推進室)
    ゼロ年代から都市開発に関わるなかで、都市のブランディングと文化発信の関係に興味を深める。当初は一人の観客として『THE END』を見ていたが、縁あって2015年のオランダ公演から“中の人”に。 各国の招聘公演での観客やメディアの反応から、『THE END』のテクノロジーアートとしての魅力に確信を得つつ、いまに至る。

    7月開催分は満席となりました

    【7月分満員御礼】フルーツビュッフェ7月分のご案内
    【6/1更新】7月分のご予約枠は全て満席になりました。

    7月分開催は、
    7月11日(火曜日)/7月27日(木曜日)となります!

    大変多くのお客様にご利用頂き好評のため、7月開催分より完全予約制のご案内とさせて頂きます。

    ご予約可能なお時間は
    ①10:00~ ②12:00~ の1日2回開催となります。(1回90分制)

    ご予約お待ちしております!

    (8月開催分は7月1日にお知らせ致します)


    老舗フルーツショップ「フタバフルーツ」監修による
    この時期に一番おいしいフルーツをはじめ、
    果物を余すことなく搾りきり、本来もつ味や栄養素をそのままジュースにする、
    ヒューロム社のスロージューサーを使ったフルーツジュースやスイーツ、
    DIYサラダバー、お食事などをお楽しみ頂けます。


    【料金】
    大人¥3,000/学生¥2,500(要学生証)/小人(3~12歳)¥1,000
    ※価格は税込

    ご予約は店頭受付もしくは、お電話にて受け付けております。
    詳しくはお店までお問い合わせください。
    TEL:03-5537-5506

    テーマは「地域の『唯一無二』、どうやってつくるの?」

    6/28(水)パノラマトーク04開催
    「銀座から世界へ、つくる人と共につくろう!」がメインテーマのトークショー、パノラマトーク。

    今回は、studio-L代表であり、地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わるコミュニティデザイナーの山崎亮さんと、文化人類学者であり、環境運動家の辻信一さんをお迎えし、「地域の『唯一無二』、どうやってつくるの?」をテーマにお送りします。

    2020東京オリンピックを控え、各地域もこの機会に魅力を発進しようと様々な試みを重ねています。地方のアンテナショップが散在する日本文化の発信基地、銀座の中心で、お二人が真の「ローカリゼーション」を語り合います。

    ~メロン&さくらんぼ~

    季節のフルーツが新しくなりました!
    旬のフルーツが新しくなりました!

    みずみずしいメロン&さくらんぼです!

    おいしさを活かしたスイーツをたくさんご用意しました!
    今しか食べられない旬の味を、ぜひお召し上がりください!




    さくらんぼ&ダークチェリーのパンケーキ ¥1,550
    メロンFLOWERパフェ ¥1.250
    3種チェリーのカスタードパンプディング ¥980
    フレッシュメロンパイ ¥950
    FRUTAS大福 ¥1,000

    ※全てドリンク付/税抜価格

    6月開催分ご予約受付スタート致します。

    【予約枠満席】フルーツビュッフェ6月分のご案内
    【5/2更新】6月分のご予約枠は全て満席になりました。当日はお席が空き次第のご案内となりますのでご了承ください。
    ***************************************
    大好評フルーツビュッフェ、6月分のご案内となります。

    6月分開催は、
    6月13日(火曜日)/6月29日(木曜日)となります!

    ご予約お待ちしております!

    (7月開催分は6月1日にお知らせ致します)


    老舗フルーツショップ「フタバフルーツ」監修による
    この時期に一番おいしいフルーツをはじめ、
    果物を余すことなく搾りきり、本来もつ味や栄養素をそのままジュースにする、
    ヒューロム社のスロージューサーを使ったフルーツジュースやスイーツ、
    DIYサラダバー、お食事などをお楽しみ頂けます。


    【料金】
    大人¥3,000/学生¥2,500(要学生証)/小人(3~12歳)¥1,000
    ※価格は税込

    詳しくはお店までお問い合わせください。
    TEL:03-5537-5506

    銀座の真ん中で、スペシャルフルーツビュッフェを開催いたします!

    フルーツビュッフェSTART!
    【4月21日追加】5月11日、30日の回のご予約枠は終了しました。6月の開催日につきましては後日発表します。
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    2017年4月18日より、スペシャルフルーツビュッフェを開催いたします!

    老舗フルーツショップ「フタバフルーツ」監修による
    この時期に一番おいしいフルーツをはじめ、
    果物を余すことなく搾りきり、本来もつ味や栄養素をそのままジュースにする、
    ヒューロム社のスロージューサーを使ったフルーツジュースやスイーツ、
    DIYサラダバー、お食事などをお楽しみ頂けます。


    【料金】
    大人¥3,000/学生¥2,500(要学生証)/小人(3~12歳)¥1,000
    ※価格は税込

    詳しくはお店までお問い合わせください。
    TEL:03-5537-5506

    お食事メニューが新しくなりました。

    NEW MEAL PLATE START!!!
    春を前にして、旬のフルーツと共に召し上がれるミールプレートが新しくなりました。

    南国フルーツの酸味と甘みを加えた香り豊かなオリジナルスパイシーカレー。
    北海道産のこしあんとホイップクリームで旬のフルーツを挟んだフルーツサンド。

    たっぷりのフルーツとご一緒に、ぜひお召し上がり下さい!
    • スキレットで焼き上げた熱々もちもちの薄焼きパンケーキ。

      スキレットで焼き上げた熱々もちもちの薄焼きパンケーキ。

    • まるでブーケのようなアイスクリームとのマリアージュパフェ。

      まるでブーケのようなアイスクリームとのマリアージュパフェ。

    旬のフレッシュなフルーツをお食事でもデザートでもたっぷりとお楽しみください♪

    旬のフルーツを存分に楽しめる「RAMO FRUTAS CAFE」
    ▼9月24日(土)オープン!

    「GINZA PLACE」3Fフロア「common ginza」にある「RAMO FRUTAS CAFE」は、スペイン語で「果物のブーケ」を意味する店名の通り、色とりどりのフレッシュフルーツを気軽に楽しめるカフェです。

    オススメは、フルーツをたっぷり使った季節ごとに変わるパフェとパンケーキ。約70年続く老舗フルーツショップ「フタバフルーツ」さんが厳選した旬の「ぶどう」と「りんご」を使ったスペシャルデザートをご用意しています!

    この他にも、カフェをご利用のお客様には話題のデトックスウォーターを自由にお召し上がりいただけるFRUIT WATER BARも是非お楽しみください♪